JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本の4社は、新幹線と在来線特急列車を乗り継いで利用する際に適用する制度「乗継割引」について、2024年春をもって全面的に廃止することを明らかにしました。
国鉄時代から維持してきたJR4社が一斉に廃止
乗継割引は指定された駅で新幹線と在来線特急を乗り継ぐ経路のきっぷを同時に購入する場合、在来線部分の特急料金から半額を割り引くという内容です。国鉄時代から存在する営業規則で、JR化後も適用条件を更新しながら存続してきました。
導入当初は新幹線の開業により在来線の長距離列車が縮小していく局面で、新幹線との乗り換えによる特急料金の高額化を防ぐことがもともとの目的と言われています。現在も、例えば北海道新幹線から新函館北斗駅での特急「北斗」、あるいは上越新幹線から新潟駅での特急「いなほ」への乗り換えなどに適用され、大都市圏と地方との行き来が多い方には特になじみの深い割引制度です。
JR北海道と東日本は「2024年春」の廃止と具体的な日付を公表していませんが、東海と西日本は2024年3月16日(土)乗車分から見直すと明示しています。
現在、東北・北海道新幹線の新青森駅と新函館北斗駅、上越新幹線の長岡駅と新潟駅、北陸新幹線の長野駅、上越妙高駅(直江津駅を含む)と金沢駅(津幡駅を含む)が在来線との乗継割引の対象となっています。東海道・山陽新幹線では、新横浜駅〜相生駅間の各駅(大阪駅を含む)で乗継割引が利用できます。これらはすべて廃止され、該当する利用の場合、在来線特急料金が実質値上げとなります。
(2024年3月16日で廃止される「乗継割引」の対象駅と、発着する主な在来線特急列車など詳細は下の図表を参照)
縮小傾向…すでに制度として破綻していた?
乗継割引は新幹線・在来線間のすべての乗り継ぎが対象というわけでなく、例えば、東京駅や品川駅は当初から乗継駅に指定されていません。営業施策に絡めた例外もあり、東海道新幹線と重複する運転区間を運行する特急「踊り子」との乗り継ぎは指定駅であっても割引対象にならないなど、利用者にとってわかりにくい制度であったことは否めません。
近年の乗継割引は縮小傾向です。2011年(平成23年)3月の九州新幹線全線開通に合わせ、JR九州は九州内での乗継割引をすべて廃止しました。JR西日本は、山陽新幹線の岡山駅〜新下関駅間で利用可能だった乗継割引を2023年4月1日(土)乗車分から廃止しています。新幹線との乗り継ぎ需要が多い山陰・四国方面の特急列車が適用外となり、全国一律制度としての公平性はすでに破綻していました。
各社はコロナ禍による利用状況や経営環境の変化に加え、インターネット予約のニーズが高まり、制度の利用者が減少していることを廃止理由に上げています。乗継割引は紙のきっぷを前提とした制度で、各社が普及を目指すチケットレス乗車サービスでは適用対象外となるミスマッチが生じていました。
筆者も、JR東日本「えきねっと」が推奨するチケットレス早期割引のおねだんを吟味してもなお、乗継割引のおトク度が上回る体験を何度も目にしてきました。そこで安い方になびいてしまうのは物の道理として、「鉄道会社として扱いづらいのでは」と、利用者目線でも気がかりな存在であったのは確かです。
現在は自前の在来線ネット予約システムを持っていないJR東海ですが、「EXサービス」会員向けに2023年10月に開始する「EX旅先予約」の新機能として、在来線特急列車もネット予約できるサービスを来春から追加します。その際、割引廃止による負担増を和らげるため、おトクな在来線商品も用意するとのことです。
ちなみに、乗継割引が廃止される2024年3月16日(土)は、北陸新幹線の金沢駅〜敦賀駅間が延伸開業する日です。この日以降は関西・中京方面と北陸方面の結節点が敦賀駅となりますが、新幹線・在来線を乗り継いで利用する際には乗継割引に代わり、両者の特急料金をそれぞれ割引して合算する新たな料金制度を導入することも併せて発表されています。
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